19.6. ヒトの個体群成長
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ヒトの個体群成長の歴史
ヒト個体群は少なくとも数十年先まで増加し続けることが予想される
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個体群に毎年加入するヒトの数は1980年代以降、減少してきている
世界の人口は、1500年は4億8000万人で、現在は67億人以上である
指数関数的な個体群成長モデルでは、個体群の成長率は一定、つまり出生や死亡は年によって変化しない、と仮定された
結果として、個体群成長は個体群サイズだけに依存した
人間の歴史の大部分において、この仮説は正しかった
10億人に達したのは1800年代初頭
ヨーロッパや米国の経済発展は栄養や衛生環境、医療の進歩をもたらし、人間は自分たちの個体群成長率をコントロールできるようになった
純増加率は上昇し、個体群成長の勢いが1900年代初頭まで増大した
1900年代の半ばになると、栄養や衛生環境の改善、健康管理が発展途上国にも普及し、出生率が死亡率を上回り、猛烈なペースで成長が増大した
世界人口が1927年の20億人から33年後1960年の30億人まで急上昇すると、一部の科学者は警告を発するようになった
彼らは、地球の環境収容力が人間で満たされると、密度依存的な要因が、人間の苦悩や死亡を通して個体群サイズを調節することを懸念した
しかし、全体の成長率は1962年にピークを迎えた
先進国では進歩した医療が生存率を改善し続けているが、効果的な避妊が出生率を抑えている
そのため、出生率と死亡率の間の差が小さくなり、世界の人口の成長率は減少に転じつつある
経済的な発展は、異なる地域で異なる時期に生じた
そのため、世界の地域ごとに人口増加率を見ると、それぞれの国で生じた変化はモザイク模様になっている
ほとんどの先進国では、増加率はほぼゼロ
table: 2008年における個体群の動向
個体群 出生率(1000人あたり) 死亡率(1000人あたり) 成長率(%)
世界 21 8 1.2
先進国 12 10 0.2
発展途上国 23 8 1.5
発展途上国では死亡率は低下したが出生率は高いまま
世界の人口には約8200万人が毎年加入しており、そのうちの大部分にあたる8000万人が発展途上国
齢構造
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1985年各年齢グループは、その1つ上の年齢グループよりも大きく、出生率が高いことを示している
ピラミッド型の齢構造は、急速に成長する典型的な個体群
2010年、個体群の成長は小さくなった
最も若い3つの年齢グループは、ほぼ同じ大きさであることに注意して欲しい
しかし、個体群は増加し続けている
この状況は、個体群において出産適齢にある女性の割合が増加することから生じている
1985年の齢構造で0~14歳だった女の子は2010年には生殖の最盛期に達し、2010年に0~14歳である女の子は2035年にその名残として急速な増加をもたらす
急速に増加する人口にブレーキをかけるのは貨物列車をとめるようなもので、実際に人口が減少するのはずいぶん年数が経過してから
たとえ特殊出生率(1人の女性が一生の間に産む子の数)が人口補充出生率(女性1人あたり平均2人子どもをもつこと)と等しくなるまで減少したとしても、合計個体群サイズは数十年の間は増加し続ける よって、15歳以下の人口の割合は、将来の成長の大まかな予想を与える
発展途上国では、全人口の約30%が15歳以下
対照的に先進国では、約17%が15歳以下
齢構造のグラフは、社会状況も示しているだろう
たとえば、増加する人口は、学校、雇用、社会的な生活基盤に対する要求の増大をもたらす
大きな高齢者個体群は、健康管理に振り向けられる膨大な資金を必要とする
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1983年人口の突出部分は1945年の第二次世界大戦終了から約20年間続いた「ベビーブーム」に対応している 膨大な子供の数が学校の入学者数を膨らませ、新しい学校の建設を促進し、教員の需要を生んだ
一方、ベビーブームの最後に生まれた卒業生は、厳しい就職競争に直面した
ベビーブーム世代は人口の大きな部分を占めているため、社会、経済、政治の動向に大きな影響を与えた
彼らは、1983年の0~4歳グループと2008年の齢構造に見られる小さなベビーブームももたらした
ベビーブーム世代は現在どうなっているか
その世代の最も高齢の人々は退職する年齢に達しており、やがて医療や社会保障のような政策に圧力をかけるようになるだろう
2008年における米国の人口の60%が20歳から64歳で、その年齢層のほとんどが労働人口で、一方65歳以上の高齢者人口は全体の13%を占める
2033年には、労働人口と高齢者人口の比率がそれぞれ54%と19.7%になる
高齢者人口の増加は、部分的には長寿命化から生じる
80歳以上の人口の割合は1983年は2.4%だったが、2033年は5.6%、2050年には8%にそれぞれ増加することが予想されている
我々のエコロジカルフットプリント
世界の人口が指数関数的に増加しているが、前世紀よりも増加率が低下している
人口増加率から、ほとんどの発展途上国の人口は、近い将来も増加し続けることが予測される
米国の国勢調査局のプロジェクトによると、世界の人口が2025年までに80億人、そして今世紀の半ばまでに95億人に増加することが予測されている
しかし、これらの予測値は話の一部にすぎない
もし十分な資源があれば、ヒト個体群にとって地球の環境収容力はどのくらいだろうか 80億人あるいは90億人を支える十分な資源があるのだろうか
世界の食糧生産を劇的に増加させなければならない
耕作地は劣化しつつあり、現在の水利用の水準は持続的でない
世界中で増加する家畜による過度の摂食は、広大な草原を砂漠に変えつつある
人口を支えるため、さらに自然資源が搾取されるにつれて、数千もの種が絶滅しようとしている
資源の利用可能性と使用法を理解する1つのアプローチ
フットプリントは、個人もしくはある人々が消費する資源を供給するために必要とされる土地面積
生態学的に生産的な土地の総面積を地球の人口で割ると、1人あたり約2.1haになる
2005年の場合、世界の人口の平均的なエコロジカルフットプリントは2.7haだった
世界の人口を支える地球の収容力を、我々はすでに超えている
米国のエコロジカルフットプリントは、国の土地面積とそれから得られる資源が支えることのできる値の約2倍
つまり、莫大な生態学的欠損
我々は不釣り合いな量の食物や燃料を消費する
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地球の人口の20%を占める豊かな国は、世界中の資源の86%を利用し、残りの14%の資源が世界の80%の人々の間で分配されている
実際、最も貧しい20%の人々は、消費する資源の1.3%しか占めていない
ある研究者は、世界中すべての人々を米国のような生活水準にするためには、地球3個分以上の資源が必要になると推定している